男らしい生き方とは


「哲学からのメッセージ」(木原武一:新潮選書)を読んだ。40歳を過ぎてからの哲学の勉強こそ人生を豊かにすると著者は言う。この本に登場するのはカント、デカルト、ニーチェ、キルケゴール、パスカル、ヘーゲル、ソクラテスと哲学初心者の私でも知っている名前ばかりだ。

訓練を積んでいない私がいきなりカントやヘーゲルなど、暗号で書かれているかのような哲学書を読むのはほとんど無理だ。読んだところで、著者の意図するところはきっとチンプンカンプンだろう。しかしこの本はそんな私のような哲学初心者にも分かりやすく、それぞれの哲学者が言わんとしている肝心なところを解説してくれている。

この本の中で特に感銘を受けたのがニーチェだった。彼の「自分自身を愛し、自分自身を信頼せよ」という言葉に感じるものがあった。

ニーチェは言う、「もっとも後悔すべきことは何か。それはおのれのもっとも固有の欲求に耳をかさなかったこと、おのれを取り違えること、おのれが低劣な者であると思いこむこと、おのれの本能を聞きわける繊細さを失うことである」と。

おのれの固有の欲求は何なのか、自分が何をしたいのか本当に分かっている人は少ない。「我がまま」に生きることは至難のわざなのである。それに比べれば、隣人を愛することはいかにたやすいことだろうか。

ニーチェと言えば「神は死んだ」という強烈な言葉で有名だが、彼の意図するところは「神に頼るのではなく、自分自身を信頼して生きよ」と言いたかったのではないかと思うのだ。

そんなことを考えていたら、昔テレビで見た「宮本武蔵」を思い出した。

吉岡一門との決闘に向かう途中、祠を見つけた武蔵、そこで思わずその祠に手を合わせ、必勝の祈願をしようとする。しかし彼は思いとどまり、手を合わせ神にすがろうとする自らをいさめ言う「神を敬えど、神にすがらず」。

「男らしい!」

ニーチェを読んでいたら、そんなことを思い出した。

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