「水木サンの幸福論」(日本経済新聞社:水木しげる)を読んだ。
水木しげるさんの回顧録と3兄弟の対談、そして「墓場の鬼太郎」誕生の漫画が掲載されている。
この中に水木しげるさんの「幸福の7か条」というものがある。
第一条:成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。
第二条:しないではいられないことをし続けなさい。
第三条:他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。
第四条:好きの力を信じる。
第五条:才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。
第六条:怠け者になりなさい。
第七条:目に見えない世界を信じる。
水木さんほど人生経験の豊富な人もいないのではないだろうか。
若いときはいろいろな職業につき、戦争では激戦地に赴き厳しい軍隊生活を経験し、生死の境をさまよい、戦後もまたいろいろな職業につきながら漫画を描き続けた。
私も漫画を描きたいと何度か挑戦したことがあるが、漫画家は絵を描く能力は当たり前だが、それ以上に知識がなければいけないことが分かった。何もないところからストーリーを捻り出すのは大変な作業だ。
水木さんは少ない給料の大半を漫画のための書籍や資料に充てていたそうだ。それゆえ「ゲゲゲの鬼太郎」が売れるまで、生活はいつも貧乏だったという。
そんな水木さんの「幸福の7か条」、とても含蓄がある。
この中の第二条と第四条、自分にとっては何だろうかと考えてみた。私の好きなこと、好きだったこと、過去これをやっていれば幸福を感じていたこと、熱中したこと、そんなことを考えた。
すると私の学生時代、メキシコにいたときのことが思い浮かんだ。メキシコ国立自治大学でスペイン語の勉強をし、共同通信メキシコ支社の奥様の好意で家に居候させてもらい、日産自動車駐在員のお子さんの家庭教師のアルバイトを数件掛け持ちしながら、中南米旅行のお金を稼いでいた。あの時が一番楽しかったなと思った。当時21歳だった。