心の燈台 内村鑑三


「こころのとうだい うちむらかんぞう」

群馬県民なら内村鑑三が何をしたかは知らなくても、名前だけは知っている。小学校2年生の息子でも知っているほどだ。

これは小中学校で必ずやる、郷土の名所や人物や名産品を読んでいる「上毛カルタ」の功績だ。この中の「こ」の札が宗教家、内村鑑三だ。

そんな彼が書いた「代表的日本人」(岩波文庫:内村鑑三著、鈴木範久訳)を読んでみた。

この本には内村鑑三が選んだ5人の日本人が外国人に紹介する形で書かれている。

新日本の創設者;西郷隆盛、封建領主;上杉鷹山、農民聖者;二宮尊徳、村の先生;中江藤樹、そして仏僧;日蓮上人。

恥ずかしながら、この本を読むまで中江藤樹という人物を知らなかったし、二宮尊徳がどのようなことをしたか知らなかった(薪を担いで本を読んでいるということ以外は)。

この本に書かれているすべての人が素晴らしい日本人だった。

特に感動を受けたのは二宮尊徳(金次郎)だ。彼は農家の長男として生まれたが、16歳の時に孤児になってしまう。親戚に引きとられ、一生懸命に働く。

金次郎は学問をしたかったが、親代わりの親戚は農民に学門は不要と、彼に学問を許さなかった。しかし彼は諦めず、知恵をつかって自力でお金を捻出して学問をしようとした。それでも学問することは許されず、寸暇を見つけては本を読んだ。それがあの有名な銅像だ。(ちなみに薪を担ぎながら読んでいる書籍は儒教の四書の一つ「大学」だそうだ。)その後彼は藩に取り立てられ、さまざまな農業改革に取り組み、成功を収めた。

すごい向学心だ。そして学んだ知識を知識として留めることなく、世の中のために、困っている人のため活かしている。そんな金次郎の生き方に感動する。人間とは本来こうあるべきなのだろう。彼の勤勉さと誠実さは私たち日本人の良心であり、真似しなければならないところだ。そして道徳教育の大切さを痛感させられた。

残念ながら敗戦後、二宮金次郎の勤勉と倹約の精神は軍国主義に繋がるものとして、戦争の象徴のようになってしまったようだ。しかしこれはまったく二宮金次郎本人とは関係のないことだ。後世の一部の人間が勝手に連想しているだけのことだ。

この本も是非読むことをお薦めする。私たち日本人の心に燈をともしてくれる一冊だ。

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