メキシコの家(15)

1991/6/21 (金)

今メキシコで住んでいるのは日本の某新聞社のメキシコ駐在員の方の社宅だ。

社宅と言っても高級住宅街のアンヘル地区にあり、家も立派だ。

メキシコの高級住宅にはたいがいメイド専用の部屋があり、そこに住まわせてもらっている。

メイド専用の部屋は、家本体とは隔離されているが、個室でシャワーも付いている。しかしキッチンはない。

それゆえ、夕食は家庭教師の家で日本食をごちそうになるか、そうでないときは外食をする。主にタコスとビール。

生活するのには全く問題ないのだが、ひとつ困ったことがある。それは蟻だ。

屋外平屋なので部屋でチョコレートなどの甘いものを食べて放置していると、いつの間にか小さい蟻の行列ができている。しかもこの蟻に噛まれると結構痛い。それゆえ、できるだけ部屋ではお菓子を食べないようにしている。

無料で泊めてもらう条件として、新聞社の手伝をすることになっている。仕事の内容は、日本から送られてくる各新聞の中南米に関係する記事をはさみで切り取り、地域ごとにスクラッチすることだ。

地域が重なるときはコーピーをして貼る。4時間程度で終わる簡単な仕事だ。これを週2回。

その他に週に1回、この家の子供さんの家庭教師をする。

土日はたいていフリーだ。

メキシコの首都メキシコ・シティーにはたくさんの娯楽がある。ルチャ・リブレ(プロレス)、サッカー、ボクシング、闘牛・・・。群馬県に居たのではこれらを見る機会はほとんどないが、メキシコシティーでは気軽に、そして安価に見ることができる。

先日もルチャ・リブレを見に行った。

派手なマスクをつけたレスラーたちが、ある時はコミカルに、ある時は華やかにその磨き上げた技を披露する。大概正義役はアステカ以来のメキシコ人で悪役はアメリカ人であったり白人だ。メキシコ人にとっては、アメリカや白人金持ちに対する一種のストレス発散の場なのだろう。

日本人レスラーも時々登場する。同じ有色人種という親近感からか、幸いにして日本人レスラーはメキシコ人を助ける正義役であるようだ。

ある土曜日の昼メルカド(市場)で何を買うでもなくブラブラしていた。

置いてあったテレビを何気なく見たら、ルチャ・リブレが放送されていた。「そういえばこの前ペンション・アミーゴで知り合った友達たちと見に行ったけ」と思いながら見ていた。

すると何とその友人が映し出されているではないか。「あれこれって!この前見に行った試合だ。」最前列に座っていることもあるだろうが、日本人の女の子は珍しいのか、かなり集中的に撮られていた。

それなら自分も映るはずだと真剣に見入ってしまった。するとやはり出てきた。思わずそのテレビの置いてある露店のおじさんに「あれ自分だよ!」と指さしてしまった。

1801

91/6/13  3-   3-   938
91/6/21  -3   0    933   15000円

TSLに掛かり約定した。

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