歩く銀杏(9) 後編

歩く銀杏(9)前編の続き。

<引用ここから>

以上、一つ目の欠落の話しは次回以降の楽しみ(そうでもないか)に譲り、今回は、二つ目の欠落について、主に言及してみたいと思います。

苦労して苦心してやっとの思いで原則を作成します。

初めのうちは、作ったものを修正したり廃棄したり、様々な試行錯誤があって当然です。

しかし、10項目出来たらその時点で、あなたは決して原則を変えてはいけない、ということ です。

ここをこうしたほうがうまく売れたな、などという事は数限りなく出てきます。

しかしそこで安易に原則を変更したり例外を設けたりすることは、一見色々考え工夫しているように見えながら、実は単に、そのときそのときの相場のあり方に自らを合わせているに過ぎない、つまり、時流に乗る、という、私たち中長期投資家が最も忌み嫌う行為でしかないのです。

例を挙げましょう。 99年の年の瀬も押し詰った頃、いわゆるITバブル相場で、インターネットで情報を集める ことがまるで相場をやることであるかのように誤解した人々が、狂熱の乱舞に酔いしれていたとき、私もどれほど参加したいと切望したことでしょうか。

A銘柄を買えば儲かることは解っている。

しかし私の原則は、単純平均以下であり、上場後10年以上であり、値ガサ株、店頭株、新 規上場株は、原則に反するが故に一切その対象に入っておらず、私はかたくなに原則を守 り通して、ケイヒンと、日本油脂と、川鉄商事と、住友不動産と、ロープを買いました。

目先の利益を捨てても、原則を守り通すことのほうが、私には遥かに大切だったのです。

テレビを消して、原則を死守せよ! いくたびも自らにそう言い聞かせながら。

しかもここで私たちは、司馬遼太郎氏や、井沢元彦氏の重要な指摘に注目しなければなりません。

それは日本人の特殊な精神性として、原則を大事にしながら少しもそれを守ろうとしない、と言う指摘です。

根源は、「天皇制」と言う原則を守りつづけながら、天皇親政がほとんど行われなかったと いうところに根ざす極めて興味深い指摘なのですが、いかんせんそこまでの言及はあまりに長くなってしまいますので今は避けたいと思います。

しかし現在の私たちも、この特殊な精神性を平然と受け継いでおり、それは憲法を大切に守って少しも変えようとしないでいながら、自衛隊の問題にしろ一票の格差の問題にしろあ るいは私立学校の助成金の問題にしろ、明らかな憲法違反を当然の如く行っているところにも表れているのです。

相場に関していえば、例えばケイ線の問題があります。

世界に類例を見ない陰陽足のケイ線を作り上げ、こういう形が出れば買い売りと、絶妙な 原則を作り上げながら、果たしてどれだけの人々がその原則を守って売買しているでしょうか。

早い話が、売りのパターンが出た場合、利益が出ていればそれに従い、損失が出ているときは無視すると言うのが、一般的なところではないでしょうか。 私はケイ線の形などは、大人のおもちゃだと思っていますから、別段それを非難しているわけではなく、つまるところ私たちの精神構造はそういうものだということなのです。

そしてだからこそ、原則を守る不退転の決意が、生き生きとその重要性を帯びて光彩を放ってくるのです。 人のやらないことをする、これこそ相場で儲ける魔法のランプではありませんか。

しかし勿論、時流に乗ってはいけないのであって、大きな時代の波にはゆるやかに身を任 せなければなりません。

そこで私は、1年に1回1項目だけ変更することにしています。 正月の2日3日、箱根駅伝を見ながら何処を直すか検討し駅伝が終わると近くの神社に 初詣に行って、神様に去年のお礼と今年の変更点の報告をして、ご加護をお願い致しま す。(本当はこんなことより神社のお参りの仕方を書きたいなあ、みんなメチャクチャで、神様が呆れかえっているんだから)

今年は初めて、ROEをほんの少しだけ、原則にとり入れることにしました。

またそれとは別に、20代から30代のやり方に、100万円から300万円のやり方に変える 時に、かなり根本的に原則を洗いなおすことになります。

しかし原則を守り通すには、ただ単に意志の力に頼るだけではすまないこともあります。

それが正に今回のような暴落に出会った場合であり、こうした暴落は、私たち人間の小賢しい知恵を、ほとんど暴力的ともいえる強大な力で、なぎ倒していってしまいます。

しかもこの招かれざる客は、今までも数年の周期を持って襲いかかって来ており、これからも周期的に市場を恐怖の嵐が丘に変貌させるのは、まず間違いのないところです。

ですから私たちの原則は、この暴力的な嵐にも耐えられるように構築しなければならないのですが、ここには実は二律背反的な大きな矛盾が潜んでおり、その矛盾の克服にはチョ ットした仕組みが必要であり、それが次回の話しになりますので、この項まだまだ終わりません。

<引用ここまで>

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