歩く銀杏(11) 荘子編 最終回 前編

歩く銀杏(11)も長文のため、2つに分けます。

<引用ここから>

株式市場というのは間違いなくみなさんが初めて経験する、まったく新しい空間です。

ですから株式投資を始めると、皆さんの精神は、必ず何らかの変化を経験することになります。

その時に、よい変化をするか悪い変化をするかですが、「悪貨は良貨を駆逐する」という不変の真理を持ち出すまでもなく、悪い変化をするほうがはるかに多いのはまず間違いのないところです。

株式市場は非情の空間ですから、よい変化か悪い変化かは一目瞭然に皆さんに示してくれます。

つまり、一年間通して利益になればよい変化、損失になれば悪い変化だと警告を鳴らしてくれるのですが、人間というものはなかなか弱いもので、何とか理屈をつけては自らの非を認めようとはしないものです。

そういう人に限って、私の書くものなど頭のまわりを飛び交ううるさいハエのように感じて、 まともに相手をしようとはしません。

情報というものは、それを最も必要としている人のところには届かない、という法則がありますので、私は別段どうでもいいのですが、ただもしよい変化とは一体どういう風になるものかな、と思われる方のために、「荘子」の雑扁<寓言>より、人間の変化9段階についてご紹介したいと思います。

私は株式投資に関して解説を附してみましたが、これは仕事に関しても趣味に関しても、 道を極めようとする人間にとっては、すべてに共通することだと思います。

1段階「野」何も知らないあるがままの状態

株というのは、上がる銘柄を探して買って、高くなったら売ればいいんだなと、ぼんやり考えている段階。

2段階「従」ちょっと違った考えにも耳を傾けてみようかなと考える状態

今まで自分が思ってもいなかった考え方があることを知り、そうしたものを吸収しながらもまだ幾分疑問や面倒くさい気持ちを拭いきれない段階。
例えば日立を同じ日に同じ値段で買っても、儲かる人もいるし損をする人もいるという事実に気づき、つまり当て方でなくやり方なのかなと、少し思い始める段階。

3段階「通」 素直になってだいぶ通じてきた段階

情報に対する考え方、テクニカルな指数、玉の建てかたなどに通じてきて、1段階の自分の考え方を振りかえり、かなり解ってきたなと思うようになる段階。
同時に、1段階にいる人を、何も解っていないのに馬鹿なやつだ、と思ったりすることもあります。

4段階「物」3段階の知識を、実際に応用して自らの技術にし、いわゆる物になった状態

ここで第一次の完成に至ります。
この段階では様々なテクニカルな指数に興味を持ち、それを何とか加工して不滅の法則を打ち立て様などと努力したりすることもあります。
相場に限らずあらゆる物に共通して、ここで満足し、俺は物になったと思う人が出てきます。

ここが第一の分かれ道で、実はこの段階を日本の稽古の世界では「初心」と呼びます。

世阿弥が「花伝書」に書いた余りにも有名な言葉「初心忘るるべからず」の初心とはこの段階で、オレなどまだまだいつまでたっても初心者だ、と思う「永遠の未完」に触れてしまった心のことを言うのであって、1段階の最初の心をいうのではありません。

1段階の心など、あっさりと忘れてしまっていいものです。

ちなみに私は、「花伝書」の、「秘すればこそ花」という言葉が大好きです。

<引用ここまで>

(つづく)

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