人は1年で出来ることを過大評価し、10年で出来ることを過小評価する。
アンソニー・ロビンス
久しぶりに、グッとくる言葉に出会った。
確かにその通りだ。
私が真っ先に思いついたのが、「株トレード」と「株式投資」だ。
株トレードと株式投資、普段この2つを区別せず、話している人がいるが、明確に違う。
株トレードは、株価の値上がり、値下がりにお金を賭け、差額を利益として得るものだ。1日のデイトレード、1~2週間のスィングトレード、数か月の波乗りトレードといろいろあるが、基本、年内に手仕舞う。1回のトレードで投資した資金の数十パーセントと、得られる利益は大きいが、複利の効果が得られず、苦労のわりに資産は残らない。
株式投資は、企業の成長に投資したり、市場全体の動きを表す指標(インデックス)に投資したりする。基本、買った株は売らず、企業の成長に合わせて投資した資産も増えていく(配当金も含む)。1年で得られる利益は、投資した資金の数パーセントとわずかだが、10年、20年と運用することで、複利の効果が得られ、大きな資産を残しやすい。
私は短時間で大きな利益を得られる株トレードを過大評価しすぎて、毎年数%の利益しか得られない長期投資を過小評価しすぎていた。
このことに気が付いたのは、同じ期間、投資信託で長期運用していた妻の資産と、トレードで短期売買を繰り返していた私の資産の比率がほぼ同じだったことだった。
例えば、500万円をそれぞれ短期トレードと長期投資で20年間運用した結果、それぞれ200%の1000万円の利益となったという具合だ。
毎月お金を自動的に積み立てていた妻と、命を削る思いで株の売買をしていた私と、結果がそれほど変わらなかったなんて・・・、私の苦労は何だったのだろうか?
確かに、ワクワク感とドキドキ感はあったが・・・。それ以来、株トレードに対する熱意が、すっかり冷めてしまった。
私が「株トレード」をしていた目的は、ただ一つ、お金を増やすためだ。
しかし、お金を増やすのに、ワクワク感もドキドキ感も必要ない。楽に、安心してお金を増やせるのが一番いい。理想は銀行預金のように、預けてほったらかしにしておいたら、数十年後、2倍、3倍と増えているというものだが、50~60年前ならいざ知らず、今の超低金利では無理な話だ。
では、株式投資なら簡単に資産を増やすことができるのかと言えば、そうでもないようだ。楽に資産を築いたように見える妻にも、大きな試練が数回あった。初めは2008年のリーマンショックの時だった。
「積み立てていた資産が半分になってしまった」と嘆いて、このまま続けた方がいいのか相談を受けた。
私は「何を言っているんだい、こういう株価低迷の時にこそ、買うんだよ。絶好の買い場じゃないか、絶対に売ってはいけないよ」とアドバイスしたのを覚えている。
結果、数か月後株価は上昇した。
そんなことが数回あったが、そのつど同じアドバイスをした。
そのお陰もあって、妻は資産を築くことができた。
十数年、短期トレードと長期株式投資をそれぞれしてきたが、資産を築くのに最も重要なことは、複利を味方につけることだと知った。
幸運にも、私は複利の効果のない短期株トレードであったにもかかわらず、資産を残すことができた。これは、よい株の先生に出会えたからだ。
今は、2人で得た資産の半分を長期投資で運用している(のこり半分は国債と現金)。
これからも短期株トレードはたびたびやるかもしれないが、資産の1%と限度額を決め、お小遣い程度稼げればいいと割り切ってやろうと思っている。