アンデス超え (29)

1991/9/25(水)

やはり噂は本当だった。チリのアリカからボリビアのラパスまではかなりの難所だと聞いていたがここまでひどいとは。

アンデス山脈をバスで越えると言うのは、かなり大変だ。飛行機では数時間で越えられるのに。しかもバスはアメリカで使用した払い下げのスクールバスのようなバスだ。座席も快適とは言えない。本当にこんなバスでアンデスを越えられるのだろうか。

朝6時頃アリカを発った。一面に広がる砂漠の世界。見なれるとこれほど退屈な光景はない。しかし少しづつ標高を上げながら、アンデス山脈に入って行く。車窓からはリャマやビクーニャなどの動物たちの姿も見える。空は雲ひとつない青空だ。

いつの間にか外は夕になり、夜になった。すると突然車のヘッドライトが消えた。しばらく暗闇の状態で進むと突然停車、何が起こったのか分からず、外に出される。周りに民家などない、まさに荒野だ、しかもかなり寒い。

しかし外に出て驚いた。空一面を覆いつくす星ぼし。あまりの星の多さに星座が認識できないほどだ。星があまりにも近くに見えるので手を伸ばしてしまったほどだ。

空気が澄んでいるからか、標高が高いからか、都会の夜空ではこれほどの星を見ることはできないだろう。標高4000mを越えるその地から見た満天の星空を今も忘れることができない。

何やら怪しい雰囲気の中、違うバスに乗せられる。とりあえず荷物だけは確保し、違うバスに乗る。これから国境にこのバスで行くらしい。先ほどまで乗っていたあのバスはなんだったんだろうと思いつつも国境に向かう。

夜10時頃、無事ボリビアに入国し手続きをする。しばらく国境でラパス行きのバスを待つ。やっと来たバスには席がないという。しかし次のバスは12時間後という。こんな寒いところで待つことなどできないとそのバスに乗り込んだ。

しかしそこからが本当の地獄だった。自分の荷物を椅子代わりに通路に敷き。デコボコの悪路に揺られ車に酔い、すきま風に身を震わせる。耐えるしかなかった。

そんな中やっと朝を迎え、ラパスについた。約6時間だったが、この旅で一番過酷な路程だった。

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