大晦日の早朝のことだ。
父親の四十九日が終わり、一段落ついたと思ったら、今度は母親が倒れてしまった。
早朝4時ころ、携帯が鳴る音で目が覚めた。
「誰だ、こんな時間」
電話に出て、「誰か?」尋ねても、無言のままだ。気味が悪い。
携帯だけでなく、自宅の固定電話にも、かかってきた。
何度か出たが、いずれも無言電話だった。ひどいイタズラだ。こんなことは初めてだ。
切っても、切っても、何度も鳴るので、固定電話のコード元を引き抜こうと1階に降りた。
コードを引き抜き、2階に上がろうとすると1階のトイレの電気がついている。(我が家のトイレの電灯は、人感センサーLEDだ。)
1階で寝ている母親も、さぞ迷惑だったろうと、トイレに行ってみると、母親がトイレで倒れていた。
慌てて2階に登り、妻を連れ、2人で母をベットに寝かせた。
目眩がして、吐き気がして、声もよく出ず、身動きとれないようだった。
看護師である妻がいろいろとやってくれて、救急車を呼ぶこととなった。
数時間後、病院に付き添った妻からの電話で、母の症状は「父親の葬式やら何やらによる気疲れが原因ではないか」とのことだった。母はそのまま入院するとのことだ。
正月は母のいない正月となった。
今年75歳の母、いつも元気で風邪などひかない母が、こんな状態であることにショックを受けた。
父が死に、母も入院、私も来年51歳、自分の残りの人生もそう長くないことに改めて気づかされた。
78歳で死んだ父の年齢を考えると、私も80歳を越えられないかもしれない。残り30年。
日本人男性の健康寿命が71歳ということを考えると、私が健康的に自立して歩けるのも20年くらいだ。
<71歳が健康寿命とした場合の、残りの人生の健康寿命>
・40歳リタイア…44% (健康な老後31年)
・45歳リタイア…37% (健康な老後26年)
・50歳リタイア…30% (健康な老後21年)
・60歳リタイア…15% (健康な老後11年)
私が自立して活動できる期間は残り30%しかないこととなる。70%はすでに使ってしまった。
60歳リタイヤともなれば、自立して活動できる期間は15%しかないこととなる。85%もの時間をすでに消費したことだ。
早めに会社を辞めて、30%しかない自分の時間を有効に使わなければ・・・。
そんなことを考えていると、子供たちが2階から降りてきた。
おばあちゃんが、今朝、入院したことを告げ、早朝からのいきさつを話し聞かせた。
「で、結局、電話は誰からだったの?」と子供に聞かれた。
「電話?」、今思うと、あの電話のおかげで、母が倒れていることを知ることができた。
不幸中の幸いにしては、あまりにも出来過ぎている。
もしかしたら、あの電話は母が、2階で寝ている私たち夫婦に気づかせるためのものだったのだろうか?
それにしては無言はおかしい。何もしゃべれないほど酷かったのだろうか?
正月が明け、母が無事退院した。
気になったので、電話のことを尋ねてみた。
母は覚えていないと言う。気がついたら病院のベットで妻に付き添われていたということだった。
携帯は常に枕元に置いているので、もしかしたら、かけたかもしれないとのことだ。
しかし、トイレに携帯はなかった。母がトイレで苦しんでいる間、電話をかけてきたのは誰なのだろうか?
う~ん。もしかして・・・、電話をかけてきたのは死んだ父親では・・・。