夢なんてなくていい


新史太閤記(新潮文庫:司馬遼太郎)を読んだ。

言わずと知れたサルと呼ばれた、羽柴藤吉郎秀吉の出世物語だ。これを読んで面白いことに気が付いた。天下人になった秀吉は初めから天下人になろうと努力していたのではなかったということだ。

気が付いたら天下人を狙える位置にいたというだけだった。

彼は仕えた主君を喜ばせることに真剣なだけだった。いかに主君を喜ばせるか、儲けさせるか、期待を上回る結果を出すかだけに努力をしていたようだ。

この本を読むと、夢を持ちそれに向かって頑張るのはよいことだと言われているが、果たして本当なのだろうかと思ってしまう。

この前読んだ漫画家の水木しげるさんの「水木サンの幸福論」(日本経済新聞社)の中にある幸福の7カ条でも、その第1条は「成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。」というものだった。

そんなことを考えていたら2010年の無職時代に、中村文昭という方の講演を聞きに長野県の上田市に行ったことを思い出した。

中村文昭氏を知っているだろうか?三重県にクロフネカンパニーというブライダル・レストランを開き、この不景気の中でも数年先まで予約で一杯だそうだ。さらに北海道で引きこもりの若者やニートと言われる人たちに農作業を教え、これからの日本の農業を担う人材育成と食料自給率をあげるべく活動をされている人だ。

熱く、そしてユーモア溢れる講演は、私に勇気と情熱を注入してくれたことを思い出す。彼の話を聴いていると新史太閤記に描かれる秀吉と共通するところがあり興味深かった。

彼は師匠と言われる方から「0.2秒の返事」、「頼まれごとは試され事」、「できない理由を探さない」、「今できることに全力を尽くす」と教わったそうだ。

その教えを実践した彼の人生は奇跡の連続だと言う。(その師匠の教えを素直に実践できた中村氏の素直さが一番の奇跡だと思うのだが・・・。)

上司はあなたのできないことなど頼みはしない。頼んだ人はあなたの元気な「ハイ、分かりました。任せて下さい」を期待しているのだ。頼んだ人の期待を(いい意味で)裏切るような結果を全力で出さなければならない。

その積み重ねがあなたのポジションを決め、居場所ができるというのだ。

もし秀吉がこの世に生きていたら、きっと同じことを言ったことだろう。

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