歩く銀杏 (3)

<引用ここから>

* 前回からの続き

本当に大まかな骨格しか書いていませんが、一応こういうやり方だと思ってください。

詳しく書かないのは、最初に書いたように、現在この「波乗り法」を使っている人はほとんどいないからです。勿論私もやっていません。

実はこの方法の成否は、ぎりぎりの最少限まで情報を拒絶できるかどうかにかかっているのです。

仮に折れ線グラフを陰陽足にしてしまいますと、それだけでやれ南十字星が出たとか三空叩き込みだとか、情報量が急速に増加します。

特に日経平均がいくら上がった、今のテーマは都市再生だ、等といったたぐいの情報は最悪です。

情報が頭に入り、波に乗る感覚を著しく減退させてしまうのです。

ですからtrader21さんがいみじくも書いていた、知る人ぞ知る伝説の相場師立花氏は、ただ パイオニア一筋、自らを「パイオニ屋」となずけて、ダウ平均が(当時はダウです)いくらするかすら、まったく知らなかったということです。

サーフィンを思い浮かべていただけたら、理解しやすいと思います。

こう乗ってこう立って、等と頭で考えていては失敗します。

秘訣はただ1つ、君よ白き波頭の波と化せ、です。

この、情報をすべて孤絶せよ、というところが、絶対に絶えられません。

絶対に!

重ねて言います、絶対に!!

私もどうにも耐えられませんでした。

相場をやっていながら、相場のことは何も知らないから誰とも話せず、新聞も読めず、さらにいえば、感覚を鈍らせないためにあらゆる勝負事は禁止、きわめてストイック(禁欲的)な生活を送らなければなりません。

ゴルフやマージャンなどもってのほかです。

この事に関しては、実に面白い様々な伝説が残されています。

書けば余りにも長くなりますので迷っていたのですが、腹をくくりました、書きます。

よってこの連載は、異常に長いものになります。

ゆっくり着実に歩いていきましょう。

そのまえに、何故この「波乗り法」を紹介しているかというと、これは江戸時代の米相場に始 まり、明治大正昭和と、数百年に及ぶ時の移ろいの中で、私たちの先人たちが営々と伝えつづ けてきた秘法であり、願わくば皆さんの関心の2割だけ、先人たちが幾多の辛酸をなめなが ら、その血と涙であがないつづけてきたこうした歴史を知ることに、向けていただきたいと思うのです。

何故なら こうした知識は普段は何の役にも立たないものですが、いつか相場の荒波にもまれて、清き心の白百合が不覚にも萎(な)えようとしたその時(私など、何度そんな事があったことか)、こうした歴史を振り返ったものを繰り返し繰り返し読むことによって、再び、たとえそれがゼロからのものであろうとも、新たなる出発(たびだち)をしてみようという、静かなる熱情が、湧きあがってくるものなのです。

古来、無数の相場師たちが、時に原点を見つめなおすことによって、自らを鼓舞し続けてきた のです。

さて、私はこの「波乗り法」をやっている人を、二人知っています。

勿論直接ではなく、マネー雑誌の素人奮戦記的なものに、片隅に少し出ていたのです。

詳しいことは書いてありませんでしたが、「東京電力で小遣いを稼ぐ」的な記事で、私にはすぐわかりました。

チョッピリ初めて自慢してもいいですか。私はその人の持ち株5銘柄、購入時期と買値を聞 ば、その人の投資方法がわかります。

わからない時は、その人が無定見に相場をやっているのがわかります。ただし、こんなこと何の役にも立ちません。

さてその二人ですが、不思議な共通点があるのです。

1、女性である。

2、相場の「そ」の字も知らない。

3、では何故知ったかというと、死んだ父親、死んだご主人が、「相場とは本来こうやるものなんだよ」といって、教えてくれた(ポイントは、死んだ、というところです)。

4、これは私の推測に過ぎませんが、恐らく父親や亭主は、その波乗りをやっていなかったと 思われる。

5、二人とも言われるままにグラフだけはつけていたが、実際に売買を始めたのは、父親、亭主が死んでからである。

つまりそういった投資法なのです。

奥さんにやらせてみますか?(冗談)

そこで人々はこの原点を踏まえながらも、もっと面白い、もっと疲れない投資法を考え始め、実に多種多様なバリエーションが、百花繚乱、花開いていきます。

今、でいえば、2年ほど前から出てきたT氏の、「あなたも株で生活できる」シリーズが、極め て簡略化した形で使っています。

他にもあるとは思いますが、最近は株の本とはトンとご無沙汰なのでよくわかりません。

なお、T氏の本は、心理的に少し無理があり、いかにも後講釈ですので、少し無理があるように思われます。

そして、伝説の天才M氏が、「中京戦法」をもって名古屋の地に登場するわけですが、それは もう少し先の話になります。

<こらむ>

「売る、買う、休む」の、正確な解説

初心者向けの本には、必ずこのことが大事だと書いてあります。

要するに年中売買しないで、休むことも大事だということですが、何故だかは皆さんご存知だ と思います。 さて、これは実は古来、4つから構成されていまして、

買うは勇、待つは仁、売るは智、休むは忍

となっていました。 待つ、があり、仁というのはなかなかわかりにくい概念なのですが、広く大きい愛、慈愛とでも 言っておきましょうか。

ちなみに、愛という言葉は明治になってできた言葉で、北村透谷や島崎藤村などが使い始め た、比較的新しい言葉で、古来日本人は、恋を使っていました。

また、この4つを「孫子」からとって、(武田信玄でおなじみですが)、

疾(と)きこと風の如く、勇を奮って買い

静かなること林の如く、仁をもって待ち

侵略すること火の如く、智をもって(欲を抑えて)売り

動かざること山の如く、忍をもって休む

といったものでした。

これはそれぞれの局面における最良の心理状態を表したものですが、疲れましたので、解説 はこの次にさせていただきます。

ただ、買いや売りに迷ったとき、繰り返し呟くと、以外と決断できるものです。 第一、ちょっと、かっこいいでしょう?

<引用ここまで>


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