歩く銀杏(10) 後編

歩く銀杏(10) 前編の続き。

<引用ここから>

とまあ、これだけ前置きをしましたので、馬鹿にされる度合いも少しは薄まると思いますので、 単純なやり方、書きます。

ただ私は、ツナギ売りも併用しており、下げ相場が半分ぐらいきたかなと思われるところか ら、まずツナギ売りの玉の買戻しから始め、それに一応のメドをつけてから現物買いに入りま すので、ホンのチョッピリ、複雑にはしてあります(とカッコをつけていっておこう)。

私が最も大切に思っているのは、現金と株との比率です。四季報を検討して、大体50~100銘柄くらい向こう3ヶ月における買い対象銘柄を選び出し ます。(半分くらいはいつも大体同じです)
仮に解りやすく、100銘柄としておきましょう。

今、現金7、株3の比率だとすると、株の比率に注目して、原則によるテクニカルな買いサインが3銘柄でたらそのうち1銘柄買います。(どれを選ぶかの原則も決めてあります)。
また3銘柄でたら、1銘柄買います。

すると、現金6、株4の比率になります。
今度は、4銘柄買いサインが出たら1銘柄買います。

次も同じです。

すると現金5、株5の比率になります。
今度は5銘柄でたら1銘柄買います。 ここで注意しなければ行けないのは、最初3銘柄でて1銘柄買ったとき、選ばれなかった2銘柄は、以後はなかったものとして無視しなければならないという事です。 新たに出た買いサインの銘柄だけを対象にします。

簡単に言ってしまえば、現金が減るにつれて、安易には買えないような、買いにくくなるような仕組みを作る必要があるのではないか、というつまらない提案なのです。

私の場合、現金が8のときに比べ、現金が2になると、4倍買いにくくなります。

買いにくいという事は、なかなか買わないという事であり安易に買ってはいけないという事ですから、心理状態は安らかに、何あせることなく何迷うことなく、暴落にも対処できるのです。

私のほとんど唯一の自慢は、84年以後のすべての暴落に付き合ってきたと言うことですが、 その経験の中でも、さしも現金2、株8以下になったことはありません。 現在も、現金3、株7の比率です。 以上ご理解いただけたでしょうか。

相場と言うのはそれ自体が極めて危険な職業ですので、最も安全なやり方で揺れ動く吊り橋を渡らなければなりません。

しかし危険な仕事であるが故に、むしろ危険を好む人が集まりやすいと言う習性があり、揺れる吊り橋をわざわざ逆立ちして渡っている人も多く、そのような人から見れば私など嘲笑の対象でしかないのですが、私は人に馬鹿にされることにはなれていますので平気なのです。

私の義兄に石橋を叩いても渡らない人がおり、こんな人ほど株式投資に最高の素質を備えていると思うのですが、そういう人は、株のかの字を聞いただけで拒絶反応を起こしてしまいま す。 人の世は、つまるところそんな風にできあがっているものなのです。

以上、ゲンソクゲンソクと、馬鹿の一つ覚えのように繰り返してきましたが、そんなものを作成するのは面倒だ、と言う方もおられるかと思います。

しかし3年間、朝から晩まで考えに考えて、損をして試行錯誤して、原則の原型如きものを完 成したならば、そして原則を死守する不退転の決意を固めたならば、買おうか売ろうかどうしようか、ウロウロソワソワ迷うことが一切なくなります。

そして、暴落にあっても悲観せず、大暴落にあっても絶望せず、さりとて上昇相場でも奢るこ となく、常に心理状態をニュートラルに近い状態に保つことが出来るようになります。

そうなんです。
常に心理状態をニュートラルに近い状態に保つ。 これが相場の勝つための、秘密の扉なのです。

いつかある日、みんなが寝静まった深夜、一杯のコーヒーの香りを慈しむように楽しみながら、ふと、このままこの原則にゆるやかに身を任せていったなら、リストラされようが、大病しようが、定年になろうが、何はともあれ、何とか生活することはできそうだな、と思う一瞬があなたに訪れることでしょう。

その時、株式投資をあきらめずに続けてきてよかった、という深い喜びが、心の底から湧きあ がってくると思います。 願わくばその時、5秒なりとも、小部屋のオヤジのことを頭に掠めていただけたら、と。

そしてまた、一度原則を作るコツを手に入れたあなたは、今度は別の原則をたやすく、次々と作ることが出来るようになります。

それは、仕事の原則、資産形成の原則、趣味の原則、子育ての原則など様々であり、それらは即ち人生の原則へとつながっていくのです。

せっかく踏み出した株式投資という難儀道、そこで手に入れたノウハウを、人生の様々な局面に応用利用しない手はありません。

<引用ここまで>

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