相場そのままと相場離れ(7)

<引用ここから>

* フローからストックへ

間違っても私のことを、貯蓄貯蓄とうるさいことを言う説教好きのオヤジだとは思わないで下さい。

私の本物の愛読者の皆さんにはすでに明白なことですが、私の拙い文章の根底を流れているのは、人間というものの弱さ、脆さに対する認識なのです。それは勿論、私自身が怠け者で仕事が嫌いで飽きっぽくて臆病で傷つきやすくて、ダメだダメ だと言われつづけて来た人間だからなのです。

考えてみれば私は、そんなダメ人間がそれでも最低限生きていくために貯蓄をし、株式投資をするにはどうしたらよいのか、ということを、ずっと考えつづけてきたような気がしています。

もしそこのところを誤解されてしまうとしたなら、私は何かとてつもなく寂しいのです。(これは 言葉のアヤだとしてもやや大げさですね)

以下、(私のような)ダメ人間が2割の貯蓄を実行する手助けになるかもしれないささやかなアイデアを少し、おせっかいのような気もするのですが挙げてみたいと思います。

1、2割貯蓄専用の銀行を決める
財形貯蓄があればそれで構わないのですが、そうでない方は当然、2割貯蓄専用の通帳を作らなければなりませんが、その際、今までの銀行ではなく、まったく別の2割貯蓄のためだけに利用する銀行を決めるのはどうでしょうか。
つまり2割貯蓄を、日常的な金銭の遣り取りからはっきりと切り離し、自らの心の中でそのお金はなかったものとしてしまうのです。

サラリーの振り込まれた日に2割現金を下ろし、スーツのポケットに入れたそのお金をしっか りと握り締め、「秘密の言葉」を繰り返しながら、その別の銀行のATMに振り込むのです。「秘密の言葉」は、一番最後に書いておきますが、他言しないで下さい(なんてね)。

(注)江戸時代、江戸は金中心、上方は銀中心の貨幣経済でした。江戸は一大消費地であり、経済の中心は蔵屋敷のあった大坂、そして商品作物の生産地は主として西日本の各藩でしたから、日本の貨幣経済は銀を中心にして動いていました。 「金の小判一枚につき銀何匁(もんめ)という交換レートがあり、金に比べ銀の価値が異様に高かったのです。(鎖国をしていたので解らなかったのです、なお知は重さの単位) : 金融機関が金行ではなく銀行であり、金座よりも銀座がはるかに多いのはそのためです。 余談ですが、遊び歌の「花いちもんめ」は、「花代銀一もんめ」の略で、女郎の花代が銀一匁 であることを意味しています。 「故郷まとめて花いちもんめ」故郷の田畑(でんぱた)売り払って、手にしたお金はわずかに花代銀一匁。

2、 十万円たまるごとに数千円程度の自分の好きなコレクションを買う
通帳の数字はあくまでも2次元の世界の平面上の数字遊びでしかありません。そこで自らの努力を目に見える形にして、目に見える所においておくのはどうでしょうか。口紅でもライターでもコーヒーカップでもスコッチでも、5つたまり6つたまり10個たまり20個 たまり、次第に場所を取っていくそのかさ(体積)が即ちあなたの資産のかさであり、うっすらと積もるホコリが、あなたが歩いて来た目に見える歴史になるのですが。

3、「私には貯蓄をするという、素晴らしい才能がある」と思う(時には口に出して呟く)
人は、やれ英語力だ、やれコンピューターの能力だのを誉めるけれど、「貯蓄力」というのは、それに匹敵する、否、それ以上の素晴らしい能力であることを、どうかしっかりと自覚し、自信を持ってください。

何故素晴らしい能力なのか?

それは、誰も誉めてくれない、誰も認めてくれない能力だからなのです。

英語だコンピューターだ、誰にでもはっきりわかる能力など、所詮それ以上のものでもそれ以下のものでもありません。星の王子さまや金子みすずではありませんが、本当に大切な本当に素晴らしいものは、普通の人には見えないものなのです。(そういえば、投資技術もそうですね)

4、年に2回、自らを修正する機会を与える
それでも意志の弱い人は、結局、わかっちゃいるけどで、2,3ヵ月で挫折してしまうかもしれ ません。(何を隠そう私がそうだったのです) そこでお正月と誕生日に、再びやりなおす機会を自らに与えてください。今度こそと、決意新たにして貯まった地点からまた開始すればいいのです。そのためにも、2割貯蓄の通帳からは、何があっても預金の引出しだけはしてはいけません。

まず何はともあれ、100万円を目標にしましょう。 そして100万円たまったら、いよいよ私たちの株式投資がスタートします。1年に1割づつ(それ以上は絶対にいけません、ゆっくりと、じれったいくらいゆっくりと)、10 年間かけて預金を株式投資用に移し変えていきます。

そして次第に、消費生活の基準を、フロー(給料等の収入)から、ストック(貯蓄と株)へと移行させて、会社や仕事から(経済的に)自立した自由な人間へと変化させていくのです。

貯蓄によって失うものも大きいけれど、必ずや、失った以上のものをあなたは手に入れることでしょう。それは何か?

勇気です。

チャップリンは素晴らしい名言を私たちに残してくれました。
曰く、「人生に必要なのは、勇気と想像力、そしてsome money」

ここで私たちは、貧しい移民としてアメリカへ渡ったチャップリンが、見事なアメリカンドリームを体現しながらも、マッカーシー旋風の赤狩りに決然とした勇気を持って対決し、ついに自由の国アメリカを去らなければならなかった記憶を蘇らせながら、彼がこの言葉にこめた本当の思いを知らなければなりません。

チャップリンが言いたかったのは「人生に必要なもの、それは勇気」なのであり、勇気を保つために想像力が必要とされ、想像力を保つためにsome money が必要とされるということなのです。なお誤解のないようにいっておきますが、some money は少しのお金ではなく、enough money のニュアンスが含まれています。

チャップリンとストックの考え方、次回になります。

最後に秘密の言葉、 「お金君、元気でな、友達をいっぱい連れて、またオレの所へ戻ってこいよ」 他言しないで下さい、あなたが笑われます。 でも私は真剣なのです。

<引用ここまで>


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