Bさんへの手紙(後編)

<引用ここから>

Bさん、さて、人はいったいどういう順番で、相場と関わりを持っていくのでしょうか。

ここで、最も一般的と思われるパターンを解説しながら、その過程で、何を克服すれば良いのかを、書いてみたいと思います。

人は決して坂道を登るように、成長していくものではありません。階段を上るように、という比喩は必ずしも的確ではありませんが、変わらない平坦な成長なき道が続き、あきらめたその時、それでもあきらめきれなかった者にだけ変化が訪れ、そう、一気 にひょいと1段、成長の階段を上る、そのように成長していくものなのです。

相場の場合通常、その成長は5段階になっています。

どうか一切の自らへの甘えを削ぎ落として、冷酷に自分が今、どの地点に立っているのかを、確認してください。
この掲示板にも溢れかえっている、上がった儲かった、下がったどうしよう、そんな甘ったれたさざめきの一切を拒絶して、無知で無力で心脆弱な、それ以上でも以下でもない等身大の自らを、しっかりと見つめてください。

さて、人はまず相場を始めると、何よりも「上がる銘柄探し」に熱中し始めます。
これが第1段階で、相場に関しては、たとえ何10年のキャリアがあろうとも、全くの素人、本人は相場をしているつもりでも、実は宝くじを買っているに過ぎないという、段階です。

最近はあまり見かけなくなりましたが、証券会社の店頭にたむろしている人々の例の挨拶代わりの言葉、「何かいい銘柄はない?」という段階です。

この人々に特徴的なことは、買った銘柄は、短期間に上がるものだと思いこんでいることです。
銀行のほとんど無利息のところには、何年間も平気でお金を置いておきながら、ひとたび銀行預金を下ろして株を買うと、すぐに上がらなければ納得しなくなるのです。

ここが証券会社や〇〇先生の辛いところで、銘柄を推奨した後、それが下がってはいけないのです。
わずか1割2割の、正に取るに足りないさざ波のような下げにすら、これらの人々はあまりに敏感に反応します。

となれば、証券会社も〇〇先生も、銘柄推奨は順張りに徹せざるを得なく、ある程度上昇が確認された時点で、推奨せざるを得ません。
となれば、推奨した時が高値だったということも当然にして起りうることであり、それで文句を言うのは、実は自らの精神的脆弱さを、露呈させているに過ぎません。

デイトレの方は別にして、よく「私の投資スタンスは、短期順張りです」という人がいますが、これは実は投資スタンスでもなんでもなく、ただ単に買った銘柄が下がるのは嫌だ、すぐに上がらなければ嫌だ、という、子どもが駄々をこねているのと変わりがない、自らの投資技術の未熟さと精神性の幼稚さを、表白しているに過ぎません。

世界も相場も、私達から遥か遠く離れたところで、私達とは何の関わりもなく動いているのです。

相場は、大回り3年ですから、3年から5年程度は、それでもやっていけるかもしれませんが、 相場というものが最低10年単位の視座を持って対処しなければならないものである以上、「短期順張り」で資産を残すことも、相場で生活することも決してできません。

もっとも、損きりを徹底的に遵守する、といったことを励行するのならば、あるいは可能かもしれません。

ただそれができる人は、すでにこの第1段階にはいないのであって、この「無節操なる上がる銘柄探し」に熱中する人には、そんな事は全く無理なことになります。

というのも、この段階の人は、そもそも「価格の変動」ということに、ほとんど経験がなく、相場という、揺れ動くアトランダムなる価格の変動に、ソワソワドキドキ、その身を蝕まれてしまっているからなのです。
いったん株を買ったら、毎日その値段を確認しなければ落ちつかない、そして一喜一憂するこの人々は、2度や3度ならともかく、継続的計画的に損きりを実行する、等という事は絶対に不可能なのです。

何故だかわかりますか。

当然本人は否定するでしょうが、実はこの段階の人々は、潜在意識の奥底で、この不愉快極まりない、自分の思い通りにならない価格変動の不安定さから逃げ出したいと考えており、しかもその反作用として否応なく相場に捉まえられており、そのために損している銘柄は、損きりよりも塩漬けにすることを選ぶからなのです。
超能力を否定する人々が、それでも無意識の奥底で、ひょっとしたら、という思いを抱いてお り(もしその思いがなければ、人は全くの無関心でいるはずです)、ために超能力にやけに詳しくなる、という傾向と同じ精神性を持つ、といったら、理解していただけるでしょうか。

損きりをした場合は、それなりのお金が手元に残りますので、また再び不愉快な価格変動の渦の中に、わが身を置かざるを得ません。
ところが塩漬けにしてしまえば、それでジエンド、諦めと共に、その不愉快さからある程度の距離を保っておくことができるのです。

間違っても、そんなバカな、と思わないで下さい。

それではどうしたら、この第1段階を卒業して、次の入門の段階に、進むことができるのでしょうか。

それにはたったひとつの、ただしかなりに困難なことを、自らに課さなければなりません。
たったひとつのこと、それは「相場に対して決して腹を立てない」「腹を立てない自分を作る」ということです。
その方法は、この次に。

でもね、本当のこと、何処まで書いていいんでしょうか。本当の事ほど、人は即座に感情的に反発するので、この国では建前しか、語ってはいけないことになっているのですが。

<引用ここまで>


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