相場の「まさか」について

相場(というより金融全般)の世界には、かの悪名高い「まさか」という、坂道があります。

ふつう、「魔坂」と書き、「まさかあの株が」とか、「まさかここまで下がるなんて」と、人々に悲鳴を上げさせながら、もはや転がることしかなくなってしまう魔の坂道です。

人生も同じ事さ、と思われるかもしれませんが、金融の世界、ほとんどこの坂道だけで成り立っているといっても過言ではありません。

人生には時々、小春日和の秋桜(コスモス)街道などもありますが、金融の世界は常に坂道です。

何故かといえば、本来金融というものが、実業に対する虚業の世界であり、陰画の世界であり、ネガであり、影であり、負の世界であるというところから来ています。

女性になどもてたこともない、さえないヒゲの中年男、たとえわが身は路傍の石くれの如きであろうとも、前途洋洋たる若き人々に、どんなに嫌がられようとも、どんなにアクビをされようとも、せめてこの一言、石なお叫ばん、言っておかなければならないのです。

また、小部屋のオヤジの、大げさなホラ話が始まったのです。

それは、

金融の世界は、他の実業の世界とはまったく異なったルールで動いている
金融の世界には、他の実業の世界とはまったく異なったルールがある
だから
実業の世界の成功体験は、金融の世界では何の役にも立たない

ということです。

何を大げさな、と思われるかもしれませんが、相場の失敗はすべてこれが原因で起こっているのです。

絶対に覚えていてください。

古来から証券界というものは、実業の世界で成功した人々が自身満々やってきて、「まさか」 と叫んで去っていく世界でした。

彼等が何故自信満々なのかと言うと、彼等は経済界での成功者であり、金融の世界も同じ経済界だから簡単なものだと誤解してしまったからなのです。

バブルとは、そういった人々が多かった時期のことであり、実業の世界の成功者が少ないと金融の世界も不況になります。

スポーツにたとえれば、野球とサッカーの違いどころではとてもなく、野球と相撲ほどもある違いなのです。 今日突然巨人軍に入団した貴乃花は、いったいどこを守ればよいのでしょうか?

どうしてそういうことが起こるかと言うと、成功する条件がまったく異なっているからなのです。

実業の世界では、明るく、行動的で、人脈が広く、シャープな頭脳、素直、思いやりなどなどなど、いわゆる、陽性な人々が成功していきます。(例外的な事例は常にありますので、無視します)

世の中の80%は、そういった人々の天下になっています。

しかし人間には、どうしても陽性になれない人もあり、また他人と同じなのはイヤダとか、偏屈、ひとみしり、なまけもの(私はこれです、超、がつきます)その他、いわゆる陽の世界から、はじき出される人々がいます。

そこで神(火水)様は、ちゃんとそういった人々のための世界を、20%用意してくださったのです。

それが文学、絵画、音楽、映画、そして宗教、(本物の)学問、等といった世界であり、あるい は発明発見、ファッション他、何らかの創造に関わる世界であり、実は金融の世界もこの領域に属するのです。(銀行員や証券マンや保険のおばちゃんは、単なる事務員ですから除きます)

明るく、成績優秀、スポーツマンの好青年、家庭は裕福両親円満、といった青年は、人生に2 度来る軽い失望と1度の深刻な挫折を乗り越えられさえすれば(最も、彼等は挫折に弱いところがあるんですがね)、80%の世界で確実にステップアップしていくことでしょう。

しかしそんな彼が、もし小説を書きたいなどという願いにとりつかれたとしたなら(現実には余りありませんけれど)、彼の幸福な人生経験は、最悪な経験に凍りついてしまいます。

小説を書くには、逆に、イジメ、登校拒否、両親の離婚などの不幸な経験が、正に至福の経験へと昇華されるのです。

相場とは本来、実業の世界の日の当たる坂道から締め出された人々が、その恨みを込めて 孤独な戦いを挑む、ルサンチマンの戦場なのです。

そうした意味では新興宗教と似通ったところもあり、かの有名なOクラブが元来宗教の仲間であったことや、また、ご存知、究極の相場師E氏が、商業高校出のうだつのあがらないサラリーマンとしてついに一度として役職にはつけなかったことなどが、いみじくも実証しているといってよいのです。

金融の世界は実業の世界とは180度異なった法則のもとに成立している世界なのです。

「魔坂」とは、実は「真逆(まさか)」であり、実業の世界の常識の、逆こそが真である、という世界なのです。

その最も極端な例を挙げて、あなたの「真逆」度を、確かめてみましょう。 あなたはこの私の説を、どうおもいますか?

● 相場のテーマ(例として都市再生を挙げます)について

都市再生の相場の大きさや広がりは、現実の材料とは何の関係もなく(それは実業の世界に 属することです)、「都市再生」という言葉そのものの持つインパクトが相場の大きさを決め、言葉の広がりが、相場の長さを決定する

ただ言葉の衝撃だけが、その相場の大きさを決定するのです。 材料は、証券会社やアナリスト達が、あることないことお好みのままに、提供してくれます。 それが彼等の本当の仕事なのです。

かつて、「エイズ」という言葉のインパクトが、相場を作り、その言葉は正に一瞬のうちに日本中を席巻したがために、その相場も、一瞬のうちに終わりました。

バブル末期には様々な言葉が生まれ、それなりの相場を形成しましたが、とりわけ「トリプル メリット」というまるで完全試合達成のような言葉から受けた衝撃は、忘れることができません。 90年代に入り、相場の低迷に歩調をあわせるかのように、インパクトを持った言葉も生まれず、あるのはただバイオ関連、ハイテク関連等といった、ミミズの滝登りのような言葉だけでし た。

そこに新しい「IT革命」という、どこかうさんくさい言葉が(うさんくささが相場の栄養なのです)、激烈なるバイブレーションを持って登場し、中身より何よりその衝撃性が、相場を持ち上げ、そしてみのもんたがクイズミリオネアで、IT革命とは次のどれかといった時、さしもの大相場も終焉を迎えたのです。

そんな馬鹿な、そう、そんな馬鹿なことがあるはずがありません。 ところであなたはこの説を、何%くらい肯定しますか。

さて、「真逆」の例をいくつかあげてみます。 数はほぼ無限にあります。

● 便利な銀行とは、不便な銀行である

便利な銀行は支店やATMの数が多いため、預けてもすぐに下ろしてしまい、お金が貯まり にくい。離れたところにある小さな信用金庫なら、おろしに行くのが面倒なため預けっぱなしにして、結果としてお金が貯まる。

以下、解説は機会があればいずれまた、

● 新聞で宣伝している投資信託は、最悪の投資商品である
時流に乗ってはいけない、ということです。

● 大底で買い、天井で売った投資は、失敗である
要するに、遅すぎます 。

● あなたの投資を成功に導く最後のインスピレーションは、相場や経済とはまったく関係の無 い本からもたらされる。

● 簡単に思われるものほど難しく(例 損切り)、難しそうに思われるものほど易しい(例 アナ リストが使う横文字すべてこけおどしです)。

● もう少し給料が上がったら解決すると思っている問題は、たとえ給料が上がっても解決しない。

● ハイリスクだと思うものはローリターンであり、ローリスクだと思うものはハイリターンである、 ただし、ノーリスクだと思うものは確かにノーリターンである。

エトセトラエトセトラ、この辺で止めておきましょう。

これが、「真逆」の世界のルールの極く一端です。絶対に、納得できませんよね、だから、「魔坂」なのです。

そこで、私の愚かな考え1つ、笑ってください。
単なる石ころのたわごとです。
本当は、どうでもいいんですが (それをいっちゃあ、おしまいだ)。

35歳までの方は、とにかくまずは仕事で成功するように努力してみてはいかがでしょうか? 投資は趣味として、少しずつ、少しずつ、この陰の世界、逆説の世界の哲学を身につけていったらどうでしょうか。

一遍に身につけようとすると、実業の世界で失敗してしまいます。

相場戦略を5割考えたら、資産戦略を3割、そして人生戦略を2割考えるのです。

株式投資で得たせっかくの知識と経験を、生きたいように生きる自らの人生戦略にとりいれるのです。

私が今一番関心を持っているのは、実は株式投資のテクニカルではなく、それを応用した資産戦略のテクニカル、否、人生戦略のテクニカルなのです。

いずれ、歩く銀杏にめどがついたら、そのヒントを連載したいと思っていますが(題名も決めて あるのです。歩け、赤い服のジョニーよです)、ここは株式クラブですので、ちょっと怒られ てしまうかなとも思っています。

次に、35歳以上の方は、2つに分かれます。

それなりの成功を収めていられる方は、この、実業の世界とはまったく異なったルールで動いている、と言う事さえ忘れなければ、きっとうまくいくと思います。 成功者に向かっていえるようなもの、私如き、あるはずがありません。

もし現在、不遇をかこっている方がいましたら、このルサンチマンの戦場に、勇躍、参戦され てはいかがでしょうか。

ただし、通常は条件を課されるのが一般的なようです。 一切の事情を問わず、今後3年間、収入の3割を貯金する、という条件です。

成功しても誰も誉めてくれず(人には一切言えません、嫉妬されるだけです)、失敗すれば馬鹿なやつよと、あざわらわれます。

その覚悟ができているかを問う条件なのです。

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