「世紀の相場師ジェシー・リバモア」(角川書店;リチャード・スミッテン著、藤本直=訳)
かつてニューヨークのウォール街にグレートベアと呼ばれた偉大な相場師がいた、ジェシー・リバモアその人だ(相場では売り方をBEAR=熊といい、買い方をBULL=雄牛という)。
彼は何度も破産してどん底まで落ちるが、そのたびに不死鳥のごとく株式相場に返り咲き、億万長者へと上り詰める。
そんな彼の決して諦めない不屈の精神に勇気を与えられたものだ。
彼の名を不動のものにしたのが、1929年の世界大恐慌だ。
彼は売り方として一人勝ちを収め、天文学的な資産を築く。
その相場哲学、自己管理能力、王侯貴族のような華々しい生活、一転して悲劇的な家族関係、そして破産。
彼の波乱万丈な人生は、相場に限らず、人生いかに生きるべきかを私たちに教えてくれる。
この世の栄華を極めた彼も、最後はピストルで自らの命を絶ってしまう。
さらにアルコール中毒で浪費家の妻ドロシーは離婚後、下り坂の人生を送り、孤独の中で死んでいく。
とことん溺愛され、甘やかされた長男ジェシーjrはDV、アル中、女遊び、母親に銃で打たれる、あげくの果てにガス自殺。
期待されていなかった、次男ポールだけがまっとうな人生を送ったようだ。
お金が唸るほどあったとしても、それが幸せへのパスポートだとは限らない。
扱い方を誤れば、不幸を呼ぶ災いともなってしまう。
リバモアという世紀の相場師を通して、相場で成功するためには何をやらなければいけないか、逆に何をやってはいけないかが見えてくる。