百戦百勝


「百戦百勝」(角川文庫:城山三郎)を読んだ。

相場の神様と呼ばれる山崎種二氏をモデルとした小説だ。以前紹介した「そろばん」を軸にして、いろいろなユニークな人物が書き加えられていて面白い。

とくに印象に残ったのが、主人公春山豆二の「考え五両」の対をなす「働き一両」で財をなした、お安の存在だ。お金を愛し続けた彼女が、女手一つでビルのオーナーにまで登り詰める、その生き方に感銘を受けた。

もう一人が、豆二の相場仲間の三六だ。「二つの豆を蒔いて、よい方を刈り取る」というつなぎで慎重に利益を積み上げていく豆二に対して、儲かれば王侯貴族、負ければ乞食とジェットコースターのような生き方に相場師としての心意気を感じてしまう。しかしこの時代の多くの相場師がそうであったように、三六も最後には消えていかざるをえなかった。

大きく儲けても最後には悲惨な最期を遂げることが多い相場師の中で、山崎種二氏がなぜ有終の美を飾ることができたのか、それを知ることができる本だ。

この本の表紙も面白い。今はなき証券取引所での手サインの写真だ。何か熱いこの時代の活気を感じる。

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